図解の順番で迷う理由と「ターゲット」が抱える悩み

多くの人が図解の順番でつまずくのは、センスやデザインスキルの問題というよりも、「どの情報をどの順番で見せるか」という考え方の型を持っていないからです。スライドや資料づくりの経験が少ないと、重要な要素と補足的な要素の区別がつかず、結果としてすべてを同じ強さで並べてしまいがちです。さらに、スマホの小さな画面では一度に表示できる情報量が限られるため、順番があいまいな図解はあっという間に「読みづらい投稿」と判断され、スワイプで飛ばされてしまいます。

本来、図解とは「情報を削り、順番を整え、読み手の理解を助けるための道具」です。しかし現場では、「とりあえず全部入れておこう」「空いているスペースにもう一要素足そう」という発想になりやすく、結果的にターゲットの頭の中で情報が渋滞してしまいます。この記事では、そうした悩みを解きほぐしながら、「どの順番で見せれば、読み手の理解が自然と進むのか」という視点で、実務に使える具体的なルールと手順を整理していきます。

情報が整理しきれず理解が途切れる問題

図解でよくある失敗は、「情報自体は間違っていないのに、並べ方が悪くて理解が進まない」という状態です。例えるなら、きれいに片づけられていない倉庫のようなもので、必要なものは確かに全部あるのに、どこを見ればいいのか分からず探すだけで疲れてしまいます。ターゲットの側から見ると、「なんとなく良さそうなことを言っているけれど、結局何から実践すればいいのか分からない」という感覚につながりやすく、保存やシェアといった行動にもつながりにくくなります。

この問題の背景には、「伝えたいこと」をそのまま画面に流し込んでしまい、「読み手がどう受け取るか」という視点が抜け落ちていることが多いです。特に専門知識があるほど、「これも知っておいてほしい」という要素が増え、気づけば一枚の図から複数のメッセージが発信されてしまいます。まずは、図解の役割を「メインメッセージを一つだけ、スムーズな順番で届けるもの」と定義し直すことが、悩み解決の第一歩になります。

視線誘導が弱く読者が迷子になる構造

図解の順番を考えるうえで見落とされがちなポイントが、「視線誘導」です。人の目は、スマホ画面の中で一定のパターンに沿って動きますが、その流れに合わせて要素を配置していないと、読み手はどこから読めばいいのか分からなくなります。例えば、タイトル・結論・補足・例示がバラバラに散らばっていると、視線があちこちに跳び、理解よりも「迷い」の感情が先に立ってしまいます。

逆に、視線の流れに沿って要素を配置すると、「目で追っているうちに自然と内容が理解できていた」という体験をつくることができます。これはビジネス書のレイアウトや、わかりやすいプレゼン資料でも同じ原理が働いており、図解もそれを小さな画面に凝縮したものだと考えると分かりやすいでしょう。ターゲットの悩みを解消するためには、「どこから読み始めればよいかが一目で分かる」「最後まで迷わず追いかけられる」という設計を、意図的に組み込む必要があります。

読まれる図解の3つの基本原則

図解の順番を整える前提として、まず押さえておきたいのが「読まれる図解」に共通する3つの原則です。これは、どんなテーマの図解にもほぼ共通して当てはまる普遍的なルールであり、一種のチェックリストのように使うことができます。具体的には、「視線の流れを設計すること」「情報の重要度に応じて強弱をつけること」「一枚で扱う情報量を適切に絞ること」の3点です。これらを意識するだけでも、図解の印象と理解度は大きく変わります。

ここで大切なのは、「デザインのかっこよさ」よりも、「読んだ人が迷わず理解できるかどうか」を優先順位の一番上に置くことです。ビジネスの現場では、オシャレな図解よりも「意思決定が早くなる図解」「行動につながる図解」のほうが価値が高く、ターゲットもそのような情報を求めています。次の章から、それぞれの原則をもう少し具体的に分解していきましょう。

視線の流れを設計するレイアウト思考

視線の流れを設計するというのは、「読み手の目に、どの順番でどんな情報を見せるかを決めること」です。例えば、スマホ画面では多くの場合、左上から右下にかけて斜めに視線が動くと言われます。この自然な流れに合わせて、「タイトル → 結論 → 理由 → 具体例」のように配置すれば、読み手は迷わず理解を進めることができます。逆に、重要な情報が右下や端のほうに追いやられていると、気づかれないままスワイプされてしまう可能性が高まります。

簡単なイメージとしては、図解を一枚の地図だと思ってください。スタート地点とゴール地点が明確で、その間にいくつかのチェックポイントがある状態が理想です。「どこがスタートなのか」が一目で分かるよう、最初に読むべき要素にはサイズ・色・位置のいずれかで目立たせる工夫を加えます。そのうえで、矢印や番号、線などを使って、「次はここを見てください」という道筋を整えていくと、自然な読み心地が生まれます。

重要度の高い情報から配置する優先度設計

次に大切なのが、情報の優先度を明確にし、「重要なものから順に配置する」という考え方です。多くの図解が読みにくくなる原因は、情報の重要度がすべて同じように扱われていることにあります。タイトル級のメッセージと、補足レベルの情報が同じ大きさ・同じ色・同じ位置に並んでしまうと、読み手は何を軸に理解を進めればよいか分からなくなってしまいます。

実務では、まず「この図解で一番伝えたい一文は何か」を決め、そこに一番大きな比重を置きます。そのうえで、「その結論を支える理由」「実践をイメージさせる具体例」「注意点や補足」といった要素に順位をつけ、画面上の配置やサイズにも反映させていきます。これは、会議資料でいうと「タイトルスライド」と「補足スライド」の関係に近く、インスタの一枚の図解の中にも、同様の階層構造をつくるイメージで捉えると整理しやすくなります。

図解の順番を決めるフレームワーク

ここからは、実際に図解の順番を決める際に使える、シンプルなフレームワークを紹介します。毎回ゼロから流れを考えようとすると、どうしても時間がかかったり、迷いが増えたりしてしまいます。そこで、ビジネスでよく使われるストーリー構造をそのまま図解に落とし込むことで、「考える前からある程度の型が決まっている状態」をつくるのが得策です。特におすすめなのが、「悩み→原因→解決策」という流れを基本としたストーリー構成です。

このフレームは、ターゲットの頭の中のプロセスと非常に相性がよく、「自分ごと化しやすい」という大きな利点があります。読み手はまず「自分の悩みと一致しているか」を確認し、そのあとで「なぜそうなっているのか」「どうすれば抜け出せるのか」を知りたいと考えます。この心の動きに沿って図解の順番を決めることで、内容がスムーズに腹落ちしやすくなり、保存や実践にもつながりやすくなるのです。

悩み→原因→解決策で流れを作るストーリー構成

「悩み→原因→解決策」の流れは、一見当たり前のようですが、図解の中で意識的に組み立てると効果が大きく変わります。まず最初に、「あなたはこんなことで困っていませんか？」という形で悩みを明示し、ターゲットに「これは自分の話だ」と感じてもらうことが出発点になります。次に、その悩みが生まれている背景や原因を整理して見せることで、読み手の中に「だから今うまくいっていないのか」という気づきを起こします。

最後に、その原因を踏まえたうえで、具体的な解決策や行動ステップを提示します。このとき、「すべてを一度に変える」のではなく、「今日から一つだけ試せること」に落とし込むのがポイントです。図解全体としては、「共感 → 納得 → 行動」の3ステップを、視線の流れに沿って並べていくイメージになります。こうしたストーリー構成を一つ持っておくだけで、毎回の図解設計が格段にスムーズになり、発信の軸もブレにくくなります。

図解の並び順を整える具体ステップ

ここからは、実際に図解を一枚つくるときの「手順」に落とし込んでいきます。頭の中でなんとなく順番を考えるのではなく、ステップを分けて進めることで、再現性の高い図解設計が可能になります。大まかな流れとしては、「結論を決める」「必要な要素を洗い出す」「要素を削る」「視線の流れに沿って並べる」という4段階です。少し手間に感じるかもしれませんが、慣れてくるとむしろ時短になり、クオリティも安定してきます。

実務的には、いきなりデザインツールを開くのではなく、まず紙やメモアプリで簡単なメモ構成を書くことをおすすめします。これは、プレゼン資料づくりでいう「ラフ構成」のようなもので、ここで順番の骨組みを固めておくと、その後のデザイン作業が非常にスムーズになります。ターゲットの限られた時間を預かるつもりで、一つひとつのステップを丁寧に進めていきましょう。

伝えたい結論を先に決めて情報を削ぎ落とす

最初のステップは、「この図解でいちばん伝えたい結論を一文にまとめること」です。ここが曖昧なまま作業を進めると、途中で「これも入れたい」「あれも入れたい」と枝葉が増え、最終的に何を伝えたい図解なのか分からなくなってしまいます。結論はできるだけ具体的に、「誰が」「何をすると」「どうなるのか」がイメージできるレベルまで落とし込むと、後の取捨選択が格段にやりやすくなります。

結論が決まったら、それを支える情報を書き出し、「本当にこの図解に必要か？」という観点で削っていきます。ここでは、「見てすぐ理解できるか」「今行動を起こすうえで不可欠か」という二つの軸で判断するとよいでしょう。倉庫の棚卸しのように、一度すべてをテーブルの上に出し、本当に必要なものだけを棚に戻すイメージです。この削ぎ落としのプロセスを通ることで、図解の順番も自然とシンプルな流れに整っていきます。

視線の順に並べて違和感をチェックする

要素を絞り込んだら、次は「視線の順番に沿って並べる」作業に移ります。ここでは、先ほどのストーリー構成をベースに、「①悩み → ②原因 → ③解決策」のようにナンバリングしておくと、画面上での配置が決めやすくなります。実際に並べてみたら、自分の目で図解全体をざっと追いながら、「どこで読みづらさを感じるか」「説明が飛んでいるところはないか」を確認します。

この段階では、第三者の目を借りるのも非常に有効です。ターゲットに近い同僚や友人に、「5秒だけ見て、何の話か言葉にしてもらう」という簡単なテストをしてみてください。もしうまく言語化してもらえない場合は、図解の順番や構成にどこか引っかかりがあるサインです。違和感を感じた箇所を中心に順番を入れ替えたり、要素を統合したりしながら、読み手の視線がスムーズに流れる状態を目指して微調整していきましょう。

図解が読まれないNG例と改善ポイント

ここまで、理想的な順番や構成の考え方を整理してきましたが、あわせて押さえておきたいのが「やってしまいがちなNGパターン」です。NG例を知っておくと、自分の図解を客観的にチェックしやすくなり、短時間でブラッシュアップできるようになります。代表的なものとして、「情報の詰め込み過ぎ」「強調表現の使い過ぎ」「ストーリーが途中で途切れている」という3つがあります。これらはいずれも、ターゲットの理解を阻害し、離脱を招く大きな要因になります。

NGパターンを減らすうえで大切なのは、「何を足すか」ではなく「何を引くか」という視点です。図解づくりに慣れていないうちは、どうしても余白が不安で、空いているスペースを文字やアイコンで埋めたくなります。しかし、読み手の立場から見ると、余白は「考える余地」をつくる重要な要素です。あえて情報を載せないスペースを残すことで、メッセージの輪郭が浮かび上がり、結果的に理解しやすい図解になります。

詰め込みすぎ・強調過多・順序の乱れを防ぐ

まず避けたいのが、情報を詰め込みすぎるパターンです。一枚の図解であれもこれも伝えようとすると、文字サイズは小さくなり、アイコンは増え、見るだけで疲れてしまう状態になりがちです。目安としては、「一枚の図解で扱うメッセージは一つだけ」「要素は多くても3〜5個まで」に抑えると、読み手の負担を大きく減らせます。また、色や太字などの強調表現も、使いすぎると「全部が大事」に見えてしまうため、本当に目立たせたい箇所にだけ絞ることが重要です。

もう一つの落とし穴が、「順序の乱れ」です。例えば、原因と結果が前後していたり、手順の3番目だけ別の場所に飛んでいたりすると、読み手は無意識のうちに違和感を覚えます。これを防ぐには、「もしこれが漫画のコマだったら、この順番で読めるだろうか？」という視点で見直してみると良いでしょう。漫画は、読者が迷わず読み進められるようコマ割りが設計されています。図解も同じように、「視線の流れが止まらず、自然とオチまで辿り着くかどうか」を基準に、順序や配置を微調整していくことが大切です。

まとめ：図解は順番を整えるだけで理解度が跳ね上がる

図解のクオリティは、装飾の派手さではなく、「情報の順番」と「構成のわかりやすさ」で決まります。ターゲットが抱えているのは、「うまくデザインできない」という悩みというよりも、「何をどの順番で見せればいいか分からない」という構造設計の悩みです。この記事で扱ったように、「悩み→原因→解決策」というストーリー構成をベースに、視線の流れや情報の優先度を意識するだけでも、図解はぐっと読みやすく、実務で使えるレベルに近づいていきます。

最後に、図解の順番を整えるためのポイントを簡単に振り返っておきましょう。
・最初に、図解で伝えたい結論を一文に絞る
・結論を支える要素を書き出し、本当に必要なものだけを残す
・「悩み→原因→解決策」の流れでストーリーを組み立てる
・視線の流れに沿って要素を配置し、第三者の目で違和感をチェックする
・詰め込みすぎ・強調過多・順序の乱れというNGパターンを避ける

これらを意識して図解の順番を整えていけば、ターゲットの理解度は確実に高まり、「このアカウントの図解は分かりやすい」と信頼を積み上げていくことができます。完璧を目指す必要はありません。まずは一枚、今日の投稿から「順番」と「構成」を意識して図解を組み立ててみてください。その小さな一歩が、アカウント全体の発信力を大きく底上げしてくれます。